日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

アカデメイアに起こったピュロン主義とは異なる懐疑主義 ~ストア派に対するための後期アカデメイア的懐疑主義

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前回のお話 

ピュロン主義としての懐疑主義とセクストス・エンペイリコスの著作『ピュロン主義哲学の概要』や『学者たちへの論駁』の歴史的意義 - 日々是〆〆吟味

 

ピュロン主義とは異なる別の懐疑主義としてのアカデメイア

もうひとつの懐疑主義

懐疑主義と言いますと古代のピュロン主義のことを指すのだそうですが、しかし懐疑主義というのはなにもピュロンの哲学だけしかないわけでもないようでした。古代哲学の中で懐疑主義と言われるものにはピュロンとは別にもうひとつの流れがあったそうです。

 

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【セクストス・エンペイリコス『ピュロン主義の概要』】 

それはなんなのかといえば、ローマよりさらに昔、ギリシア時代の代表的哲学であるプラトンの系譜によって現れたのだと言います。

 

プラトンの哲学と懐疑主義

しかしそう聞くとちょっと不思議な感じがします。プラトンの哲学は前々回述べたようなAとBという立場を決めることから避けるためにわざと判断停止するようなものではありません。むしろイデアという非常に強力なものを持ち出して真理であると考える哲学で、懐疑主義からすればプラトンのような真理を確定してしまうような立場は批判されていたかと思います。

 

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そのためプラトン自身の哲学からは懐疑主義というものは現れてきにくいと思うのですが、しかしプラトンも人間です。寿命がくれば亡くなってしまいます。そしてプラトンが開いた学園アカデメイアはそのまま存続しています。そうするとプラトンから継承したお弟子さんたちの中には懐疑主義的な考え方を持つ人が現れた、ということになるのだそうです。

 

ストア派の祖としてのキュニコス派とプラトン

どうしてプラトンの学園であるアカデメイアに懐疑主義というものが現れてきたのでしょうか。それはなんでも当時の哲学学派による対立というものが関係しているそうです。

 

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ローマ時代の代表的な哲学にストア派というものがあったのですが、このストア派はソクラテスのお弟子さんの系譜から現れるキュニコス派と呼ばれる変わった哲学の流派から生まれたと言います。ソクラテスはプラトンの先生でもありますから遡れば同じ流れにあるわけですが、このキュニコス派と呼ばれる哲学の代表的な人物でもあるディオゲネスにはプラトンを揶揄したものもあります。

 

【ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』】 

(たしかこの逸話はこの中のディオゲネスの項目に書いてあったんじゃないかな。ちなみにキュニコス派のディオゲネスとこの本の著者とされるディオゲネスは別人です。ややこしいですね。昔の名前の人は同じものが多くてすぐわからなくなります)

それは人間を羽のない二本足の動物、とプラトン派の人が言ったのを逆手に取り、毛を毟ったニワトリをぶら下げて、これが人間だ、と言ったというものですが(大意)、なにやらこの話だけでもあまり仲良さそうではなさそうですね。

 

【山川偉也『哲学者ディオゲネス』】 

(ちなみにキュニコス派のディオゲネスについてまとまって書いてあるのは多分この本くらいかと思います。またこの本によるとキュニコス派は日本語で犬儒派と訳されるけど、犬儒の儒は儒教の儒と重なり、君子のイメージが結びつくから実はよくない、ということが書かれていました。ディオゲネスはそんな権威を全部嗤ったので訳語として合わないんだよ、ということらしいです。なるほど)

 

ストア派と懐疑主義的アカデメイア

そんなキュニコス派のディオゲネスですが、もともとこんな感じでかなりヘンテコなお人で樽の中に住んで犬のように振る舞ったともいいます。しかしそれは社会の通念に徹底的に逆らい個人の中で高潔な精神を保とうとする志向がありまして、ストア派はそうした点を継承したのだそうです。

 

しかしそんなストア派が主流になってくるにつれ、既にギリシアの時代に大達成を成し遂げていたアカデメイアの人々はまったく面白くなかったのかもしれません(ちゃんとそう書いてるのは読んだことないけど、勝手にそんな風に想像してみる)。そのせいかストア派を徹底的に批判する人がアカデメイアの中に現れたのだそうです。

 

【エピクテトス『人生談義』】 

(ストア派の代表的な哲学者のひとりですが、元奴隷であるエピクトテスの透徹した質素な生き方はたしかにディオゲネスと連なりそうな気はしてきます)

 

そしてストア派の哲学が成り立たなくなるほどにとことん論難しまくったそうです。それはストア派の考え方を疑いまくることによって根底からすべてひっくり返すような勢いのあるものであり、いわばアカデメイア懐疑主義というものはストア派に標的を絞った対ストア派的懐疑主義だったそうです。

 

そしてこれがピュロン主義とは異なる古代の懐疑主義として存在していたようなのでした。

 

次回のお話

プラトンのアカデメイアと哲学の変遷 ~プラトン亡き後のアカデメイアの研究態度の変化 - 日々是〆〆吟味

 

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お話その269(No.0269)