日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

沢尻エリカと大河ドラマとNHKと 〜撮り直しは逮捕されたからといって必要なのだろうか

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【本文】沢尻エリカと大河ドラマとNHK

沢尻エリカが逮捕されました。逮捕自体については言えることがありません。

 

芸能人の不祥事と自粛

ただ近年の芸能人の騒動の際に、出演作品への自粛やお蔵入りが取り沙汰されます。今回もそのようで大河ドラマに重要な役所で出演していたために撮り直しにも膨大な費用がかかり、お蔵入りかと騒がれてもいます。

 

確かに逮捕された芸能人を作品に出演させるのは気分的に咎めてしまうかもしれません。しかしこれが民放のTV番組であれば配慮するのはまだ納得いくのですが、NHKでも同じように配慮してしまうのはどのあたりに理由があるのでしょうか。

 

TVと宣伝広告とスポンサーと番組

以前消費社会と広告について書いたことがありました。その時物があふれてしまったのでただ生産しているだけでは物は売れず、イメージを結びつけて宣伝(広告)することによって購買意欲を掻き立てて物を売るのだ、というようなお話でした。そしてそうした物=商品と結びつけるイメージとして芸能人が必要なのだ、ということもお話しました。

 

そしてTVというのは基本的にこうした商品を売るための広告媒体です。民放のTV番組は無料で視聴者は見ることが出来ますが、それはスポンサーがTV番組の制作費を肩代わりしてくれているからです。以前ある番組でキャスターの方が、CMって見ている人は番組の間に挟まっていると思われるけど、経済構造から言えば逆でCMの間に番組が挟まってるんだ、と述べていたことがありました。その通りだと思います。

 

ですから民放においては不祥事を起こした芸能人を映さないようにするのはスポンサーの意向として理解できます。なんといっても番組制作費をTV局は受け取っている側ですし、スポンサーとなる各企業は自社の商品を売るために広告媒体としてTVにお金を払っているのです。そこで悪いイメージのついてしまった芸能人に多額のスポンサー料を支払い続けるわけにはいきません。ですからスポンサーは他の広告媒体(他の番組、局など)に広告費を移してしまいかねませんし、それを避けようとTV各局は先手を打ってその芸能人を無関係なものにしようと配慮します。これは経済行動として合理的です(情はないけど)。

 

NHKと受信料と制作費

しかしNHKは民放と違いスポンサーなどいません。NHKが番組の制作費としているものは視聴者の受信料です。それもN国などのように反対を掲げて選挙に勝利してしまうような、半強制的な形での徴収です。形は違いますが、取られる方としてはあまり税金と変わらないような感覚でとられているかもしれません。そのためN国のような主張も一定の支持を集めるわけです(たとえネットでのパフォーマンスの魅力によって支持されていても、理念としては一応そうなります)。

 

こう考えてみますとNHKはスポンサーに配慮して沢尻エリカの出演した作品を撮り直したり、お蔵入りにしたりする必要はありません。では誰に配慮しているのか、といえば、おそらく視聴者でしょう。もしくは逮捕された芸能人などを局の主要コンテンツで、しかも重要な役所で出演させているなんて、沽券にかかわると思われたのでしょうか。どちらにせよ誰か(身内でも)に非難されると判断されたのかもしれません。

 

しかし、なんでも大河ドラマの制作費は30億円くらいかかるらしいですし、再撮影も一話につき数千万円かかると出ています。これはとんでもない額です。これを民放ならばスポンサーが手を引いてしまうのでお蔵入りしてしまうのはわかりますが、NHKは受信料によってまかなわれています。となると、もしお蔵入りしたとしたら30億円、撮り直したとすれば沢尻エリカの出演していた話数×数千万円が受信料から無駄にされるわけです。税金であれば説明責任が必要となるかもしれませんが、受信料であれば入った後のお金はNHKのものなのでそんな必要は多分ないのでしょう。ですから無駄に使おうとNHKの自由です。

 

NHK朝ドラの制作費は1年で約14~20億円、大河は30~35億円|NEWSポストセブン

再撮費は1話あたり数千万円…大河「麒麟がくる」現場は沢尻容疑者逮捕で大パニック|ニフティニュース

 

そもそもスポンサーの必要ないNHKは視聴率も関係ありません。視聴率がなぜ重要なのかといえば、それだけ多くの人が見てくれているからで、それだけスポンサーの広告=CMを目にしてもらえる機会が増えるからです。そのため各企業は視聴率の稼げる番組へとスポンサーにつきますし、視聴率が悪ければ番組は打ち切りになります。広告価値が低いからです。しかしNHKにはこの経済関係がありません。視聴率が良かろうが悪かろうが受信料は一律に徴収されます。

 

各企業が経済システムに則って生産から消費に転換してしまった中で広告を必要とし、最も大勢に行き渡るメディアとしてTVは存在し(今はネットを考えない)、民放TV局が基本的に広告媒体として存在し番組を制作していかざるをえない中、国営放送局としてのNHKは視聴率を必要とする理由が根本的に存在しないのです。それでも視聴率を求めるとすれば、理由はなんなのでしょうか(面子?)。そして撮影を終えてしまった作品で、不祥事を起こしてしまったからといって億単位のお金を使って撮り直す理由は、NHKという特殊な放送局においてどこに求められるのでしょうか。

 

具体的な問題の程度と、合理的判断/空気を読む

それに大河ドラマに沢尻エリカが出演しているか否かは、こんな最低でも何億円もかかるような問題でしょうか。テロップで、この作品は昨年の何月ごろに撮影されたものです、と入れるだけではなぜだめなのでしょうか。テロップでもそりゃお金はかかるでしょうが、それこそ撮り直しの億分の一くらいですむように思えます。

 

この費用に対する効果と、社会的に非難される可能性を天秤にかけた時、非難される可能性をとって億単位のお金を使うことは合理的なことなのでしょうか。ましてやそのお金は受信料。忘れてはいけませんが、見ている人のお金です。入ってしまえばNHKのお金ですが、TV局の番組制作費としては民放がスポンサーからもらっているものと同質のものです。もし民放で撮り直しがあればその費用はスポンサーが負担するのだと思いますが、その場合やっぱりスポンサーに納得してもらわなけれはならない理由をTV局は説明するでしょう。しかし今回沢尻エリカが逮捕されたからといって、NHKは受信料から得た制作費でかなりの話数を撮り直さなければならない理由を、受信料を支払っている視聴者にどう説明するのでしょうか。そんな莫大な費用がかかるなら沢尻エリカでもいいではないか、と思うことは間違った判断でしょうか。企業がスポンサーであれば企業及び商品イメージが悪くなるから受け入れられなくても、視聴者にはそんな商品販売のためのイメージ化など必要ないのですから。

 

言いたくありませんが、もしNHKの判断が視聴者の様子を見て、というよりも、空気を読んで、ということであれば、それこそ日本が戦争に向かった時の軍事指導者たちの言い分そのものではないでしょうか。その場の空気がそうであったから、具体的で合理的な判断をとらずに覆すのであれば、いつまでも戦前と変わらぬ非合理的な判断をする、空気だけを読んで間違った選択ばかりをしてしまうと言われた戦後的評価のまま日本は過ごされてしまいます。

 

なんて、今回は趣を変えて時々的な話題をとりあげてみました。たまにはこんなものを書くのもいいかもしれませんね。

 

追記:ブックマークを見ますと結構途中で配役が変わることへの違和感を重視される方が多いですね。その違和感をなくすために再度費用を投じて撮り直しもよし、とするならば、受信料を支払う視聴者層のひとつの判断かもしれません。この場合作品の統一性のために支払った受信料は無駄ではない、ということでしょうね。

 

気になったら読んで欲しい本

丸山眞男『現代政治の思想と行動』

〔新装版〕 現代政治の思想と行動

〔新装版〕 現代政治の思想と行動

 

丸山眞男『超国家主義の論理の心理』

超国家主義の論理と心理 他八篇 (岩波文庫)

超国家主義の論理と心理 他八篇 (岩波文庫)

 

丸山眞男は戦後思想の出発点ですが、その最初の観点は戦中の軍事指導者たちが明確な自我を持たずにその場の空気に流されて勝ち目のない戦争に突入していった、というものです。

ここから日本人は決定的に重要な問題でも合理的に判断するのではなく空気によって判断してしまう=非合理的で損をするような判断でも平気で選んでしまう、というのが戦後思想の課題となりました。それが今日まで変わらず残されているわけです。芸能人の不祥事における自粛の中には、これと同じ問題構造があるように思われたので載せてみました。

元々は上の単行本にまとめられていた論文集だったのですが、最近になって岩波文庫に入りました。戦後の古典として無視できないからでしょう。岩波文庫の表題作が件の論文です。たしか1947年発表だったと思います。変わらないままでは困ります。

山本七平『「空気」の研究』

「空気」の研究 (文春文庫)

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そして山本七平はそうした日本における空気の問題をとりあげ、実は戦前と戦後の日本は何も変わっておらず同質なままだ、と言ったそうです。ただ私は山本七平をちゃんと読んでいません。

『ヘルタースケルター』(映画)

ヘルタースケルター

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ヘルタースケルター スペシャル・プライス [Blu-ray]

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沢尻エリカが本格的に復帰してから、再度地位を築いたと思われる作品。またこうしてご活躍されることを願っています。

岡崎京子『ヘルタースケルター』

ヘルタースケルター (Feelコミックス)

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こちらは原作。私はこちらしか読んでません。しかし、今回の事件といい沢尻エリカがぴったりなイメージ…


今回に関係ありそうなお話

消費のための宣伝、広告 〜マスメディアと触れる人々 - 日々是〆〆吟味

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