日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

偉大な文明国と空っぽの日本 〜三島由紀夫の逆説的日本評価

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中国は偉大ですべてがある、と豪語出来るほどですが、では日本はどうなのでしょうか。これが逆でなにもない、という風に考えられているそうです。

 

三島由紀夫が述べていたそうですが、日本は空っぽの国である、他の大国と比べてなにもない、壮大な思想もなければ偉大な文化もない、しかし、このなにもないということこそが日本の文化である、だから自分はこの日本の空っぽさを守る、と、自らの保守的立場を明確にしたと言います。福田和也か宮台真司が紹介していたと思います。

 

これは近代化される過程の日本において、西洋基準のものを自らで再発見(もしくは捏造)していく中でそれに匹敵できるものがほとんど見当たらない、という批判の中で、逆説的にひっくり返し、そのなにもないことこそが日本だ、と、評価してみせたのでした。

 

たしかにヨーロッパ的な思想的建築物は日本にはないようです(私は日本思想に詳しくないので、具体的には説明できませんけれど)。ヨーロッパは古代ギリシアに哲学が発し、ベブライ経由のキリスト教が融合し総合的で壮大な哲学/神学の体系を築き上げました。それはすごいもので、ものが見えるという水準から国家や世界の問題まで関連づけて説明するような理論体系を持っているのです。中国やインドでも同じだと思います。仏教や儒教とその発展によって人間から世界までを含む一大理論体系を有しているそうです(これまた私は詳しくないので具体的にはわかりません)。

 

これに比べると日本は各々の考えを持つことはあっても、様々な考えを統一し壮大な理論を作り上げるような真似はなかったようです。しかし、これはある意味では当たり前と言えるかもしれません。なぜならそんな真似を出来たのはヨーロッパとイスラームとインドと中国くらいなもので、いわば文明の揺籃地でしか成立しなかったと言えるからです。古代の時点で既に相当の達成と蓄積があり、たとえばギリシア哲学の1つの頂点はアリストテレスですが、この時代に総合的な学問体系を築いていてヨーロッパの学問はアリストテレスの注釈にすぎない、と言われたりもします。ヨーロッパとイスラームに関していえば、いかにアリストテレスを咀嚼するかが学問と思想の水準を決めてきたくらいなので、アリストテレスなき国々ではどうあっても太刀打ちできないのでした。

 

しかしインドと中国はアリストテレスがいなくてもブッダがおり孔子がいて、彼らの教えを中心に続々と思想を練磨してきました。おそらく日本にも中国から輸入した後に続いて練磨した人々はいたのだと思うのですが、そうして日本で磨いてきたものがあったとしても次の瞬間には中国から大陸で磨き抜かれた代物が海を渡ってやってきてしまうのです。それも途中の練磨の過程もわからず完成された状態で。自らの苦闘との落差にきっと衝撃をうけたことでしょう。戦後思想の巨人といわれた吉本隆明は、日本の思想は自力で小屋を建てたと思ったら、次の瞬間に大陸から嵐がやってきて自分たちの作ったものをすべて吹き飛ばしてしまう、と述べていたかと思います。こうなってくると立派なものは自力で作るより他所からやってくるものを待つようになるのかもしれませんね。

 

そのため日本にはヨーロッパ、インド、中国といった壮大な思想体系は持つことなく空っぽのように思われたのでした。しかしそうした考えは比較的一般的だったようで、三島由紀夫はそれを批判から再批判して評価へと転換させたのでした。

 

気になったら読んで欲しい本
文化防衛論 (ちくま文庫)

文化防衛論 (ちくま文庫)

 

多分三島由紀夫が上のようなことを述べているのはこの本だと思うのですが、昔読んだ時には私にはよくわかりませんでした。たしか学生運動の最中に学生と対話をしていた内容が収録されていたはずです。三島由紀夫は知識人のコスモポリタン(世界市民)傾向を批判し、外国の本を日本語で読んで分かった気になっているのなら、日本語で日本の古典を読んで理解した方がマシだ、といった発言も本書の中でしていたかと思います。逆にいえば保守とは日本の古典的作品を原文で(つまり古文でそのまま)読んで理解し味わうことの出来る者を指すので、かなりハイレベルです。いや、相当か。単に日本好き、というものを三島由紀夫は指しているわけではないようです。それは日本嫌い、というのと同じでどちらも好き嫌いの感情主義にすぎない、と思っていたのかもしれませんね。そのへんを確かめたければ是非一読ください。

また手塚治虫は三島由紀夫をライバル視していたそうですが、三島由紀夫も手塚治虫をかなり意識していたようで、この本の中で学生に向かって、君たちがそんなこと思うのは手塚治虫の漫画を読みすぎたからだ、なんて発言しています。大物同士の関係を仄見える挿話ですね。

日本人は思想したか (新潮文庫)

日本人は思想したか (新潮文庫)

 

吉本隆明が日本の思想について上に述べていた本はどれだかわすれてしまいましたが、本書はその吉本と哲学者の梅原猛、宗教学者の中沢新一が座談で日本の思想について話しています。なんでも専門家からは批判があるそうですが、何も知らない私などはそんなこと関係なく楽しく読めて勉強になるので面白く読みました。けど、随分昔なのでほとんど忘れてしまっています(苦笑)。

日本文学史序説〈上〉 (ちくま学芸文庫)

日本文学史序説〈上〉 (ちくま学芸文庫)

 
日本文学史序説〈下〉 (ちくま学芸文庫)

日本文学史序説〈下〉 (ちくま学芸文庫)

 

以前もあげましたが、日本の文化・思想について総覧として読むならこれがいいのではないでしょうか。ただこちらは気軽には読めません。その代わり相当に知識が詰め込まれていて一応全体像だけはつかめるかと思います。

 

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