日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

手塚治虫と日本のアニメとその体制 〜人も金も機材もない工夫

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アニメーションの原理はパラパラ漫画と変わりません。1枚1枚の絵を連続で映すことによって動いているように見える、というものです。これはなにもアニメーションだけに限らず映画でも同じです。今はデジタル化されて変わってしまいましたが、フィルムの時代であれば1コマ1コマが一枚の写真で、それを連続で映すことによって映像が動くわけです。理屈は同じですね。

ただ、アニメーションの場合は、映画の1コマ1コマにあたるものをすべて手作業で描かなければなりません。映画ならカメラ一台あればすむ作業を、すべて人の手でやる必要があるのです(代わりにロケもセットも必要もなく、手元に資料でも集めておけば描くことも出来るでしょう。映画は映すためのものを探し求めることが大変です)。

 

さて、映画であればアメリカに雄大な自然があるように日本にも美しい自然があります。マリリン・モンローがいれば高峰秀子だっているのです。映す対象は負けていません。ですから映画では最初っから日本は優れていたようです(詳しくは知らないんですけど)。戦後すぐにでも黒澤明や木下恵介が映画撮っていたみたいですしね。

しかしアニメーションは手作業でお金もかかります。単純に描く絵の枚数が増えれば映像は滑らかになり、少なくなれば動きません。そのため手塚治虫の『鉄腕アトム』に動きを見て感激したみなもと太郎は、アニメ版『鉄腕アトム』を止まっていると評しました。本来動くはずのアニメーションより、超絶技巧を持つ手塚治虫のペンによる漫画の方が動いて見えるというのです。

 

これが手塚治虫の始めた日本のアニメのスタートでした。手塚自身嘆くように、実に酷い代物だったそうです。

 

手塚治虫としてはディズニーのような芸術的なアニメーションを志しました。しかし実際はカクカク動くコマ落ちした絵物語にしかなりません。お金がなく、人がなく、機材もない。そんな中でどうするか、と考えた手塚治虫はこの場を乗り切るアイデアを出していきます。

 

まず、人物像をすべて描きません。顔のアップを多用します。そして顔の輪郭はそのままに、目と口だけを動かします。こうすることによって顔の輪郭を一枚、目と口を数パターン描けばやり過ごせるのでした。

次に、アトムが飛ぶシーンなど、同じ絵を使いまわしました。よくゲームなどでも同じモンスターを色だけ変えたり反転させて使ったりするのと同じで、1つのシーンを複数のシチュエーションに合わせて使うことで各々のシーンで描く絵を減らしました。

 

このようなアイデアは、さすが手塚治虫、と思ってしまいます。とにかく苦境の中にあった日本のアニメ事情を乗り切るために考え、実際になんとかしてしまったのでした。しかし、前回も述べましたが、この体制が21世紀まで残されてしまいました。手塚治虫もそんなことになるとは思わなかったでしょう。ですが、この手塚治虫によって作られてしまった制約を後の世代の人々がそれぞれに乗り換えようとして、日本のアニメは発展していったみたいなのでした。

 

そこまで話がいきませんでしたね。また次回!(←アニメ調に)

 

参考となる本
まんが学特講  目からウロコの戦後まんが史

まんが学特講 目からウロコの戦後まんが史

 

編集者で漫画原作者で評論家の大塚英志が、漫画分野の師にあたるみなもと太郎をインタビューして漫画史を語ってもらう一冊。とにかく知らない漫画家、作品がよく出てきます。みなもと太郎は70年代頃までの漫画を知る生き字引です。なにごとも歴史はあるので、漫画好きの方は戦後からの漫画の流れに触れてみるのもいいのではないでしょうか。手塚治虫やトキワ荘、花の24年組は知っていても、その周りにいた優れた漫画家たちは普通知らないかと思います。私は全然知りませんでした。なにせ半世紀前の話ですからね。面白いし勉強になります。

この中に、みなもと太郎が漫画版とアニメ版の『鉄腕アトム』を比べて、アニメのアトムは動いていない、と断じる一言があります。

鉄腕アトムoriginal (光文社コミックス)

鉄腕アトムoriginal (光文社コミックス)

 

しかし手元にある漫画文庫版の『鉄腕アトム』を読んでもイマイチよくわかりません。ですが、おそらくはこの版だと思うのですが、大きなサイズで『鉄腕アトム』を読んでみると、みなもと太郎の言っていることが少しわかった気になるのでした。文庫版の小さな絵では手塚治虫の描いたものでも動きがよくわかりません。しかし大きなサイズだとダイナミックに絵を感じることができ動いているように見えるのです。

大塚英志がどこか別のところで書いていたかと思いますが、元々『鉄腕アトム』は大きなサイズで出ていたそうです。それは宮崎駿の漫画版『風の谷のナウシカ』と同じサイズで、当時徳間書店のアルバイト編集者だった大塚英志は、隣で鈴木敏文が、ナウシカはアトムと同じサイズで出す、と言っていたのを聞いた、と証言していますから間違いないでしょう。『風の谷のナウシカ』は『鉄腕アトム』に倣ってあの大きさの本になったのですね。そして『風の谷のナウシカ』も漫画ですが読んでみるとアニメのように感じます。動くように感じる漫画になるためにはあのサイズがいるのかもしれませんね(『AKIRA』も同じサイズですからね)。

ただ、私はこのサイズの『鉄腕アトム』を持っていません。古本屋で見つけ立ち読みして帰ってしまったので、正確にどの版なのかわからなくなってしまいました。不確かな情報で申し訳ありません。今思い返すと残念ですが、きっとそこそこの値段だったのかもしれませんね。

 

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ディズニーと手塚治虫と日本のアニメ 〜ひとつのアメリカ文化に憧れた日本人 - 日々是〆〆吟味

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追記

はてなブックマークから参考にした本が古く、先日放送されていたNHKスペシャルと違う、あまり憶測で書いては手塚治虫先生に失礼だ、とのご指摘を受けました。私はその番組を見ていませんのでわかりませんが、おそらく私に間違いがあるのでしょう。漫画研究も進んでいますから、私のような素人では間違いがあろうかと思います。それは門外漢の限界としてお許しください。ただこうしたご指摘を頂けることによって、読んでくださる方々に他の情報源を示すことが出来ますので感謝します。

新しく正しい情報としてNHKスペシャルを参考にしてください。おそらく

NHKオンデマンド|スマートフォン

これがそうではないかと思います。

文書化してくださったものも見つけましたので、一緒に載せておきます。気になった方はご覧になってください。

歴史秘話ヒストリア「ぼくはアニメの虫 手塚治虫がやりたかったこと」 手塚治虫といえば「マンガの神様」…でも… - 歴史秘話ヒストリア

こちらを読みますと目パチ口パクのことは書いてあるが他の発言はない、ということかもしれません。同じ絵の使い回しは、他の手塚治虫を特集した番組で見た覚えがありますのでそのままにしておきます(自伝を見直しますと、ちゃんとバンク・システムとして手塚治虫自身が述べていました)。

また憶測で書いたのは申し訳ありません。これも私の限界です。出典をすべてあげられればいいのですが、そのような真似出来兼ねますので極力参考となる本をあげ、また記憶もととなる情報源が不明なものはその旨を明記しておこうという方針でこのような書き方になりました。専門家であれば確かな情報で文章を書くことも可能でしょうが、素人が書く以上不確かで曖昧な情報が入り憶測で書いてしまいますので、せめてその境界線を引いておければと思います。可能ならば私の書いたものなどではなく、他の本から学ばれることを望みます。確かな情報は私のような素人の書くネット上の文章よりも、専門家の書く本の中にあると考えられるからです。私の書くものはそうした本への誘い水となれることを目標としていますので、最終的な着地点となる本へ向かえるような戯文でしかないことをご了承ください。参考となる本として載せているものは私自身が参考にしたというだけでなく、私の書いたものを読まれて関心を持たれた方々が次に読むものとして参考となるであろう本として載せています。私の書いているものは、そこへ向かうためのただの足踏みばでしかありません。

 

一応ご指摘の箇所と思われるところを本文から削除し、ここに記載しておくことにします。記載しておく理由は、訂正文だけではどのように間違ったのか後でわからなくなるためです。後々ご覧になった方自身でも判断できるように残しておきます。

 

 

また、おそらくはキャラクターを簡素化しました(どこで読んだ記憶もないので曖昧にしておきます)。戦後の人材不足の中でアニメーターもろくに育てる余裕もない状態では、下手でも共有して同じキャラクターが描けなくては困るからです。

 

 

ご指摘ありがとうございました。